薄暗いオフィスで、黙々とパソコンを打ち、外国語の謎を解いていく孤独な姿。翻訳者というと、そんなイメージが頭に浮かぶかもしれません。確かにそうかもしれませんが、それは正確とは言えません。なぜなら、この数年間、言語サービス分野は驚異的なスピードで成長し、翻訳プロジェクトは一人では手に負えないほど大きなものになったからです。そのため、複数の翻訳者、校正者等のチーム全体が必要とされています。しかし、全員の力をどのように調整し、調和させればいいのでしょうか。
どうすればいいのか悩んでいるうちに、どんどん波が押し寄せてきます。「翻訳」という海に迷い込んだ時は、どんな船にも船長が必要です。そして、プロジェクトの大海が荒れると、その舵をしっかり握るのが、プロジェクトマネージャーなのです。これがプロジェクトの全過程において、どれだけ重要な存在であるか、一緒に見てみましょう。私が、この未知の領域を案内します。
プロジェクト開始―「出発しよう!」
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あなたがプロジェクトマネージャーだとしましょう。メールの着信音が聞こえました。お客様からようやく注文が入りました。さて、どうしましょうか?チームのメンバーにメールを転送するだけですか?言うまでもなく、それはあまりにも簡単すぎるでしょう。
- まず、現実的なスケジュールを立てるために、プロジェクトの要件(どの言語からどの言語に訳すのか。翻訳のテーマ、ジャンルは何か。いつまでに訳すのかなど)を理解する必要があります。スケジュールのバランスを取ることも大切です。スタッフが仕事に飲み込まれないようにしましょう。
- また、翻訳者のためにファイルを準備する必要があります。しかし、お客様がWord文書を送ってくれるとは限りません。JPG、 PDF、XML、DTP等、さまざまなフォーマットが送られてくるので、翻訳者と校正者がそれを変えられるようなフォーマットに変換しなければなりません。
- それから、翻訳メモリや用語集、スタイルガイドなど、チームの作業を円滑に進めるために役立つものがないか、お客様に尋ねることも望ましいです。そうすれば、スタイルと単語の両方を調和することもできます。
- もちろん、予算を組むこともプロジェクトマネージャーの役割です。お客様は必要な作業量を過小評価することが多いので、料金交渉をすることを覚悟しておきましょう。新人だからといって、「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざのように、他人に利用されてはいけません。さあ、勇気を出して、今こそ自分の主張を通す時です!ただし、決して丁寧な態度を忘れてはなりませんね。
このように、プロジェクトマネージャーにはコミュニケーション能力が欠かせません。お客様のガイドラインをすべて理解し、それをチームの各メンバーにできるだけ明確に伝えることです。しかし、最も重要なのは、チームメンバーが各自の仕事に集中できるよう、常に気を配り、「雑用」もこなさなければならないということです。
プロジェクト期間中―「羅針盤を絶対に見失ってはいけない。」
翻訳そのものを担当しないとはいえ、のんびりできるわけではありません。
- スタッフの仕事をこまめにチェックするのがプロジェクトマネージャーの役目です。常に問題点に目を配ることが、良い船長になるための資質です。
- また、お客様に進捗状況を報告することも大切です。なぜなら、満足した顧客は、また戻ってきてくれる顧客だからです。信頼性を示したら、貴重な紹介先を獲得することができるでしょう。
- お客様にファイルを送る前に、必ずダブルチェックをしましょう!どんなに優秀な校正者でも、誰にでも間違いはあります。プロジェクトマネージャーとして、自分が最後のチェックポイントであることを忘れてはいけません。もしミスを見落としたら、校正者ではなく、自分が責任を負うことになります。船が沈んだら、船長も一緒に沈まなければならないのです。
プロジェクト終了―「陸だ!」
もうすぐです。
ファイルを完全にチェックした結果、お客様は仕事に満足しています。
遠い灯台のかすかな光が見えます。
ファイルをメールに添付し、お客様のメルアドを打ち込みます。
カモメの鳴き声が聞こえます。
「送信」をクリックします。
ついに、陸地に着きました。
しかし、喜ぶにはまだ早いです。乗組員と宴を張る前に、最後の仕事が残っています。それは事後検証、つまりチームが、今回のプロジェクトを反省する機会のことです。どのような問題が発生したのか?どのような解決策を思いついたか?など。過去の成功や失敗に基づき、次回はよりうまくいくはずです。確かに、「温故知新」と言われていますね。
プロジェクトマネージャーの仕事は厳しいと思われるかもしれません。どんなにプレッシャーがあっても、プロジェクト全体を管理し、冷静に対処しなければなりません。しかし、挑戦する覚悟がある人にとっては、やりがいのある仕事です。言語サービス分野、翻訳者にかぎらず、これほど面的な仕事だと思うと、わくわくしませんか?そして、大海の広さを見てこのような考えが頭に浮かぶのではないでしょうか。
「冒険はこれからだ!」
ハナエ・ムニエ